2020-05

武士をレンタルしてみました

経験者の話は心に留めておくのが吉(2)

木曜日の朝。 予定通りゴンを大学に連れて行くことになった。 問題は大きく二つある。 ひとつ目は、ゴンと電車に乗ること。 昨日のエスカレーターのようなことが朝のラッシュで許されるわけがない。 「今日は、昨日行った駅から電車っていうものに乗...
武士をレンタルしてみました

経験者の話は心に留めておくのが吉(1)

いったい誰が想像できようか。 「こちら、レンタル武士のゴン」 「茜殿ですな。柳田権左衛門と申します」 「ヒュッ」 「茜?!」 出会い頭早々に、友人が鼻血を噴いて倒れるなんて。 ▽ 「それで、お雪はどういう理由で俺をれんたるしたんだ?...
武士をレンタルしてみました

旅に必要なものは着替えと路銀と道連れ(5)

「お雪……」 「うん」 「鉄が走って、青が点滅して赤……?」 「落ち着いて」 街を歩くこと、僅か五分。 車、バス、トラック、横断歩道。 ゴンの好奇心は、興味関心を通り越して処理できなくなっていた。 「お雪、鉄が凄い速さで通り過ぎていっ...
武士をレンタルしてみました

旅に必要なものは着替えと路銀と道連れ(4)

武士をレンタルするために問い合わせたのが月曜日。 ゴンが家にやってきて、2年ぶりに兄さんが帰ってきたのが火曜日。 そして、今日が水曜日。 「馬鹿なの?!何してるの?!窒息するの?!」 「ぶはっ!あっはっはっ!晴!これ楽しいなあ!」 「楽し...
武士をレンタルしてみました

旅に必要なものは着替えと路銀と道連れ(3)

「着替えがないー?!」 午後六時半。 今日の夕飯は、目玉焼きと焼き鮭、大根のお味噌汁。 まず、塩を振った鮭をキッチンに備え付けられている魚焼き機に投入する。 次に冷蔵庫から卵を3つ取り出す。消費期限が近づいてたんだよね。人数が多いから...
武士をレンタルしてみました

旅に必要なものは着替えと路銀と道連れ(2)

六畳のダイニング。 窓から入る西陽が、床に三人の影を映した。 兄さんは仁王立ちし、わたしとゴンはその正面で正座をしている。 「で?どうして可愛い可愛い僕の妹の家で、僕が知らない男が留守番をしていたのかな」 「兄上」 「君に兄上と呼ばれる筋...
武士をレンタルしてみました

旅に必要なものは着替えと路銀と道連れ(1)

人間、一人ひとつくらい癖はある。 母さんは、早とちりからくる謎の脳内変換。 空は、電波。 かくいうわたしは、余計なことを言う。 「おかえりー、雪」 バイトから帰宅したわたしを待っていたのは、兄さんの晴(ハル)。爽やかな笑顔とは裏腹に、そ...
武士をレンタルしてみました

わたしは武士をレンタルする時代に生まれてきたらしい(3)

ダン!ダン! ドアを叩く音で雪は目を覚ました。時刻は午前五時前。 「こんな早い時間に誰」 非常識にもほどがある。 いくらオートロックなしの鉄骨アパートとはいえど、チャイムとインターホンはついているよ。 わたしは眠たい目を擦って、ルーム...
武士をレンタルしてみました

わたしは武士をレンタルする時代に生まれてきたらしい(2)

さあ、落ち着こうわたし。大事なのは過去ではない。現在と未来だ。 ベッドから降りて、パソコンのデスクに腰掛ける。 「さて、と」 彼氏が居ない歴は年の数。 小中高で男子のアドレスを手に入れたことはない。大学内でもバイト先でも、男子との私的な...
武士をレンタルしてみました

わたしは武士をレンタルする時代に生まれてきたらしい(1)

一際目を引いたのは、吸い込まれるような蒼い瞳。 いつしかテレビで見て憧れた、海の底の色をしていた。 ▽ 『レンタル武士はいかがですか?』 「新手の詐欺か」 それとも、危険なメールの類だろうか。 わたし、坂下雪は、パソコンの受信ボックスに...
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